都会と「東京の森」をつなぐ。
芝浦で奥多摩の木を使うワケ

野村不動産グループは豊かな自然を有する東京都・奥多摩町と包括連携協定を締結し、循環する森づくりに取り組む「森を、つなぐ」東京プロジェクトを始動しました。
「BLUE FRONT SHIBAURA(芝浦プロジェクト)」(以下、「ブルーフロント芝浦」)への本社移転に先立って、建設敷地内にある浜松町ビルディングに本社移転に向けて新しい働き方をトライするトライアルオフィスを設けており、現在、トライアルオフィスの床でつなぐ森の木材が使用されています。今後は、主に野村不動産グループの事務所や不動産商品の建材及び家具として、利用を広げていく方針です。

トライアルオフィスやブルーフロント芝浦での木材利用ついて、橋本(野村不動産ホールディングスグループオフィス戦略室推進課)と塚本(野村不動産 芝浦プロジェクト推進部 推進一課長)に話を伺いました。

トライアルオフィス・カフェエリアの床で活用されている「つなぐ森」の木材(フローリング)
ブルーフロント芝浦で採用検討中の木材サンプル

「森を、つなぐ」東京プロジェクトとの連携の一環として、芝浦のトライアルオフィスでつなぐ森の木材をフローリング材(表面材)として使用しています。2022年につなぐ森の地上権が野村不動産グループに30年間設定されたことを受け、つなぐ森の木材利用方法を検討し始めたことがきっかけでした。塚本は「最初は屋外での利用を検討しましたが、メンテナンスの問題があったため、オフィスラウンジ壁面のルーバーとして採用することにしました。単に使用するだけではなく、デザイン性の高いものを望んでいたため、日本を代表する建築家である槇 文彦氏率いる槇総合計画事務所に設計を依頼しました」

オフィスラウンジのイメージパース。ルーバーとして活用される奥多摩の木材。

橋本によると、トライアルオフィスでの取り組みを社内外に伝える活動で多くの社員からポジティブな反応が得られたそうです。「ナチュラルテイストが好評ですね。さらに、奥多摩の木を使用していることを紹介する大きなPOPも置いているのですが、『東京の森の木で作られているんだ!』と驚かれる方もいます」

戦後、大量に植林された杉やひのきの管理が滞ったことによる森林の荒廃、針葉樹ばかり植林されたことによる生物多様性の喪失など、森林の多面的機能の低下が問題となっており、奥多摩の森も例外ではありません。加えて、林業の衰退や少子高齢化・過疎化も深刻な問題です。このような森が抱える課題を解決する取り組みを「森を、つなぐ」東京プロジェクトで行っています。

森づくりにおいては、植林、木の保育、収穫、木材の伐採・活用といった森林サイクルの再稼働を目指すと共に、生態系ピラミッドの健全化や重要種の保全等の生態系管理を図ることで、生物多様性の保全やCO2吸収量の増加、土壌・水源涵養機能の強化を図っています。その他にも、広範囲の皆伐を一度に行わず、毎年異なるエリアを小規模に伐採する「小規模モザイク状皆伐」を行うことで、動植物への負荷を最小限に抑え、木材生産と生物多様性の両立も行っています。このような森そのものの価値を高めることに加えて、東京都森林組合をはじめ、地元製材加工所、建材メーカー、施工会社などと連携しながら、木材のサプライチェーンの強化・再構築を行い、木材利用の促進に加えて雇用創出なども目指しています。

このようなつなぐ森の取り組みは、森が循環し、豊かな自然が取り戻され、森からつづく、川、そして芝浦の目の前に広がる海へとその恵みの恩恵をうけ、また木材の利用などを通じた社会・経済の新たな価値を創造するといった「ランドスケープアプローチ」へのチャレンジとなっています。

芝浦でつなぐ森の木材を利用することは、野村不動産グループのサステナビリティを体現することに加えて、さまざまな社会課題解決に資するものとなっています。

東京における「ランドスケープアプローチ」のイメージ

東京にあるとはいえ、奥多摩へ足を運ぶのはハードルが高く、なかなか難しいものです。そのため、芝浦のトライアルオフィスの内装につなぐ森の木材を使用し、実際にそれを見たり触れたりすることで、来訪者に奥多摩の木に関心を持ってもらえたらと思います。さらにこの取り組みを通じて、つなぐ森の取り組みや野村不動産グループあるいは芝浦で体現するサステナビリティについて知ってもらうのが狙いです。

芝浦プロジェクト推進部 塚本

橋本は次のように言います。「木の活用方法はさまざまですが、建材として使用すると目に見えないことが多いです。しかし、オフィスのフローリング材のように目に見える場所で使用することで、野村不動産グループの社員に新しい発見をしてほしいと考えています。また、社外に対しても建材としての活用は伝わりにくいため、目に見える形で使用することが良いコミュニケーションツールになります。目に見える場所での木材の活用を積極的に増やし、森に足を踏み入れた時の足元に広がる緑や自然を感じられるようなものもつくって、よりつなぐ森に関心を持ってもらえるようなきっかけを作りたいですね」

野村不動産ホールディングス グループオフィス戦略室推進課 橋本

「芝浦エリアは海への広がりを感じることができる立地が特徴です。森だけでなく、海とのつながりや自然との調和を感じられるような取り組みを進め、生物多様性の保全にも努めたいです」